塾長の夏季研修③

 「倒木更新」を繰り返し、命をつないでいった。
 溶岩が冷え固まってできた地面に、風で運ばれてきた種子が落ちる。芽を出したかと思うとすぐに朽ちて土になる。また次の種子が風に乗ってやってくる。芽を出しては朽ちる。長い年月をかけて、うっすらと土の層ができる。土の層は木々の成長を助けるが、根をしっかり張らせるには至らず、若い木は大きく成長できずに倒れる。倒れた木の上に種子が落ちる。そこから芽を出し、根を延ばす。根は倒木をまたぐように張り出す。倒木はやがて朽ち果てて消え去る。成長した木の根元が空洞となる。かつてそこに倒木があった痕跡である。
 この「倒木更新」は、英語で「nurse log」というらしい。「nurse」は看護師、「log」は丸太を意味するが、若木の栄養となって朽ち果てていく丸太に看護師のやさしさを感じる言葉である。

2023年09月01日